音楽療法ってなに?
~音楽教室と音楽療法の違い~
一般社団法人 日本音楽療法学会認定音楽療法士 
馬場久美子
一般的な音楽教室では、教わる人の「音楽の知識や技術、音楽性の向上」 を目指しますが、音楽療法では、音楽活動を通して、行動をより良く変容させる、 コミュニケーション能力を促進させるなど、
「well-being(ウェルビーイング)
を目指します。
一方、音楽経験が少ない子どもの音楽療法では、
「音楽の知識や技術、音楽性の向上」
を育むことと
「well-being(ウェルビーイング)
が同時に行われます。
音楽の力について

音楽にはさまざまな力があります。多くの人が音楽を聴いて思わず体が動いたり、 癒されたりした経験があるのではないでしょうか。

これらは音楽の力の一例ですが、音楽療法ではその他にもある さまざまな音楽の力 (生理的、心理的、社会的、認知的な面に作用する力) を具体的に用いて、 それぞれの子どもの状態に合わせた発達を促す仕掛けをします。

そのように行われる音楽活動は楽しく、どのような状態の子どもでも参加でき、 子ども自身が主体的に活動する場になります。

どんなことをするの?

子どもの音楽療法は、発達心理学、認知理論、学習理論、発達学、行動論などに基づき、 子どもの状態に合わせた手法を選択し、組み合わせて行われます。

リハビリテーションを目的とした活動例
音楽の心理的な力を使って思わず身体を動かしたくなる状況をつくり、楽しく身体を動かします。
音楽の心理的な力や生理的な力を使って苦痛や不安を和らげた状態をつくります。
感覚統合を目的とした活動例 音楽の心理的な力を使って楽器を鳴らしたいという意志を引き出した上で、 楽器を鳴らすために必要な視覚、触覚、固有受容覚を育て、それを展開していく中で認知力を育てます。
社会的な行動を育むことを目的とした活動例 音楽の持つ社会的な力を用い、指図されているという思いをすることなく、 ともに同じ活動することができるようになります。

以上のような活動を通して、音楽の力によってやりたいという意志が引き出され、 自らその行為を行っているという主体感を持つことができます。 そして、その活動を自分自身が成し遂げたという喜びや誇りを感じることができます。 それは成長へと向かう力、生きる力を育みます。

最後に音楽とは…

私たちは「言葉だけでは伝えることができない思い、言葉では言い尽くすことができない思い」を、音楽で表現しています。

たとえ身体が思うように動かなくても、言葉を表出することができなくても、音楽を感じ、表情や行動にして表現することができます。

個々に存在している私たちですが、音楽の中ではつながり、共感し合い、今この時をともに生きていると実感することができます。